渋沢栄一「病床聴鶯」詩

 病床に鶯を聞く  薬や食事、すべてに気を遣い、寝返りを打ってばかりで眠られず、時刻さえ定かでない。  誰も知らないだろうが、憂悶まみれの病床の唯一の楽しみ、それは明け方の窓辺に時折鳴くウグイスの声。  病床聴鶯  薬方食餌総関情、輾転無眠報幾更。  誰識百憂唯一喜、暁窓時聴早鶯声。  ※下平声・庚韻。  …
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黄庭堅「黄龍清和尚真賛」詩

 ※「黄龍清和尚」は北宋の禅僧・霊源惟清のこと。  黄龍清和尚真賛  黄河の水はどこまでも冷たく、白髪はあくまで白い。  いかなる絵画の名手がどんな技巧を尽くしたって、和尚の真面目を描き切れるものではない。  黄龍清和尚真賛  黄河徹底凍、白髪通心白。  雖有顧陸手、百巧画不得。             …
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顔度「呈左律師」詩

 ※顔度は中国南宋時代の官僚。  左律師に上呈する  先人は仏法の第一義を高く掲げ、決してそれを説破されることなく、そそり立つ峰の頂きの、それ以上の道筋の絶えたところにどっかと腰を据えたものです。  いま、俗に流され、方便の手段を繰り出すばかりでは、修行者たちの水準は日増しに下がっていくでしょう。  呈左律師 …
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大槻磐渓「児文彦拝師範学長之命将赴任於宮城県言此勉之」詩

 息子・文彦が師範学校長を拝命し、宮城県に赴任する折り、これを励ます  本日は、蘇洵が発憤し、諸葛孔明が廬を後にする日。  お前は朝命を拝し、堂々、人の師となるのだ。  5万3千もの学校を設置し、億兆の民人を教化する。  その任に堪えるや否やを語るなかれ、皇国の風を宣揚することはまさにこの時にかかっているのだ。   …
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朱松「淮南道中微雪」詩

 ※朱松は中国南宋時代の官僚。朱熹の父。   淮南への道中に細雪にあう  空いっぱいに果てしなく雲が陰り、しんしんと降る雪が美しい。  まるで春の生気のまだ微弱なのをあざ笑うかのように、ことさらに旅路の心細さに寄り添うてくる雪景色。  鳥はすでに日の落ちた村に帰り、寒梅はみずみずしい花蕊を包み込んでいる。  酒の用意を…
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董蘿石「敬次先師韻求教」詩

 謹んで先師王陽明先生に次韻して教えを乞う  学問修養を進めるにあたってはまず真実なる念慮を土台とするべきで、知識でもって人々を威圧するのはいけない。  作為を絶した奥深いところを掴みたければ、自身の霊妙不測な心の働きというものを顧みよ。  穀物の種をねんごろにはぐくみ育ててゆくように一つことに取り組むのが肝要で、鏡(心)の塵…
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邵雍「賀人致政」詩

 官職を辞した人をお祝いする  人はおおむね官に就くことを喜ぶものだが、道に達した人はそんなものに引っ張られることはない。  辞職したのは安月給を嫌ってのことではないし、年老いたからでもない。  物事の盛衰のことわりに通達したことで、天の出処進退の趨勢を悟ったからなのである。  心を清らかな風光のなかに解き放つがよい。まして…
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大槻磐渓「雨夜夢友人」詩

 雨の夜、友人が遊びに来る夢を見る  一人の夜は侘しくて、灯もチラチラと今にも消えんばかり。と、そこへトントンと扉をたたく音が。  交歓のときには風流な話しだけをしようではないか。不遇を嘆いてその是非を論じるなんて、何の意味もない。  酒代の借金だって、普通、帳消しにしてもらうことなんか難しかろう。人生の八、九割は思い通りにい…
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渋沢栄一「題平九郎遺刀」詩

 ※平九郎は渋沢栄一の養子・渋沢平九郎のこと。新政府軍と戦い、自決した。  平九郎形見の刀  一体いつになったら罪をすすいでやることができるのやら。これでは泉下の霊を慰めるすべがない。  今夜、燭台をかかげて形見の刀をねんごろに眺めたが、まだ当時の血痕が残っているではないか。  題平九郎遺刀    烏兎何時能雪寃…
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邵雍「偶書」詩

 たまたま書きつける  おかしくもあり、嘆かわしくもある。人生とはいったい何なのだろう。  あらゆる事柄をすべてまとめて歌に込めて歌ってしまおう。  世のありさまは軽薄さが増し、手のひら返しがいよいよ横行し、年月の過ぎ去るのは流水のような速さ・激しさだ。  反面、静かに坐して瞑想する味わい、そこから得られるものは甚だ多いこと…
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渋沢栄一「輓藍香尾高先生」詩

 ※藍香尾高先生は渋沢栄一の師・尾高惇忠のこと。  尾高藍香先生を悼む 二首(明治34〔1901〕年)  この世でその風姿を目にすることは、もうない。春先の深夜、先生の訃報で夢は破られてしまった。  藍香書院の夕べ、庭先で燭台をもって詩を学んだ頃のことを今も覚えている。  輓藍香尾高先生二首 明治三十四年  人…
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山田知足斎「江門除夜」詩

 ※山田知足斎は山田方谷の嗣子・山田耕蔵のこと。   江戸での大晦日  ビュービューと北風の吹く大晦日、独り書物の整理をしていると、物悲しい気分になってくる。  夏には蛍の、冬には雪の明りで読書する学問の志を懐きながら、何一つ成就しないままに無情にもまた一年が過ぎるのである。  江門除夜  浙瀝寒風除夜天、独収…
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渋沢栄一「送孫敬三之欧洲」詩

 孫の敬三が欧州に旅立つのを送る  君がいってしまったら、離別の悲しさをかみしめなくてはならない。その旅行用の上衣は、これから何度も風塵を被ることになるのだろうね。  ロンドンの春景色にパリの月(欧州は美しい風光に乏しくない)。けれども忘れることなかれ、故国には君の帰りを待ちわびる年老いた肉親のいることを。  送孫敬三之欧…
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邵雍「晨起」詩

 ※邵雍は中国北宋の思想家。  朝早く起きて  山は高く聳え、川はあくまで深い。特に心積もりはないが、さて、この朝の時間をどう過ごそうか。  この地上では一つの時節が終わり、天は再び、万古不易の、ものを生み出し育む働きを作動させる。  暁の楼閣には靄が立ち込め、小ぬか雨が山林を濡らしている。  この風光は淡泊なものであ…
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渋沢栄一「汽車中即事」詩

 ※渡米中の作。  汽車のなかで(二首)  六尺のベッドに三尺の棚。そこに茶瓶や酒樽がのっている。  夜中に夢を破った雷のような音は、発車を告げる汽笛だったか。  汽車中即事二首  六尺臥床三尺棚、茶瓶酒甕載家軽。  半宵夢破殷雷響、知是汽車発駅声。  ※下平声・庚韻。  クローゼットにテーブル、…
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董蘿石『従吾道人語録』第40則

 ※董蘿石(董澐〔とううん〕)は中国明時代の思想家・詩人。本則は『論語』公冶長篇「子曰わく、孰か微生高を直なりと謂う。或るひと醯を乞う。諸れを其の隣に乞いてこれを与う、と。」の解釈をめぐるもの。  以前、張九成(※)が注釈をつけた四書(『大学』『論語』『孟子』『中庸』)を読んだが、まこと身体による検証(体認)を経た、奥の深いもので…
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楊万里「又題寺後竹亭」詩

 再び代度寺の裏手の竹亭の壁に書きつける  人気のない部屋を通って欄干にもたれかかっていると、竹が月光を反射して亭内をひんやりと照らし出した。  と、壁に何やら字句が映し出された。はて、これは誰の句だろう。酔い心地のなか、消えかけの灯火を傾けてしげしげと検めるのである。  又題寺後竹亭  行尽空房凭尽欄、竹光和月入亭…
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楊万里「題代度寺」詩

 代度寺の壁に書きつける  十五年ぶりにお邪魔したところ、以前にいた僧侶も半ばほどが残っており、寺の様子も変わっていない。  ツゲの木も当初は本当に小さかったが、今ではひさしの高さを越え、なかなか立派だ。  題代度寺  一別重来十五年、残僧半在寺依然。  黄楊当日絶低小、已過危簷也可憐。  ※下平声・先韻。 …
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小野湖山「漫成」詩

 何となしにできた詩    孟子は開口一番「義」と「利」を区別して「義」を選び取るべきことを説き、『周易』はといえば開巻劈頭「(元亨)利貞」といい、「利」の調和作用の面を称賛している。  同じ「利」字なのにこれほど様々に用いられるのだ。どうとでもいえるマジックワード、孔子がほとんど言及しなかったのも、むべなるかな。  漫成 …
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文天祥「衣帯賛」

 ※文天祥の絶筆とされる。死後、下帯に書きつけてあるのを発見された。  帯に書きつけられた賛  孔子は「仁を成せ」と教え、孟子は「(生命を捨てて)義を求めよ」と説いた。義が尽くされるからこそ、仁に到達できるのだ。  聖賢の書物を読んで一体何を学び得たのか?そのことについて、今後は何とか恥じ入らずにすみそうだ。  衣帯…
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